Q.

dorico で MIDI を読み込む場合、コードや歌詞を読み込む方法はないのでしょうか。


A.

DoricoでMIDIファイルを読み込む際には、基本的には「音符情報(ノート情報)」と「テンポ・拍子」などの基本的な演奏情報のみがインポートされ、コード記号や歌詞(Lyrics)は読み込まれません。理由と現状、そして代替案を以下に整理します。


✅ 現状:DoricoのMIDI読み込みの限界

項目対応状況
音符・リズム読み込み可
拍子・テンポ・キー読み込み可(ある程度)
音色(MIDI Program Change)一部対応
コード記号❌ 読み込み不可
歌詞(Lyrics)❌ 読み込み不可
各種記号(強弱・アーティキュレーションなど)❌ 基本的に無視される

🔄 回避・代替方法

① MusicXMLを使う

もし使用しているソフト(例:MuseScore、Sibelius、Finaleなど)がMIDIではなくMusicXMLでエクスポート可能なら、それを使うのがベストです。

  • MusicXMLはコード記号や歌詞の情報も保持可能
  • DoricoはMusicXMLの読み込みに比較的強い

② MuseScoreを経由する方法

どうしてもMIDIファイルしかない場合:

  1. MuseScoreなどでMIDIを開く
  2. 手動でコードや歌詞を再入力(自動では不可)
  3. MusicXMLでエクスポート
  4. DoricoでMusicXMLを読み込む

③ Doricoで手入力する

MIDI読み込み後、Dorico内で以下の作業を行います:

  • 歌詞ツール(Shift+L)で歌詞入力
  • コードツール(Shift+Q)でコード記号入力

🚫 補足:なぜMIDIに歌詞やコードが含まれないのか?

MIDIは元々「演奏データ(再生情報)」に特化しており、楽譜上の表現(コード、歌詞、強弱など)は含まない仕様です。形式としては非常に軽量ですが、記譜には不向きです。


ご希望のMIDIファイルがある場合、それをベースに最適なインポート方法をご提案することも可能です。
必要であれば、お持ちのMIDIファイルの形式や目的(例:ボーカル入り、伴奏用など)を教えてください。


Q.

コードや歌詞を内蔵しているMIDIはどういう構造になっているのでしょうか?


良い質問です。「コードや歌詞を内蔵しているMIDI」というのは厳密には、標準MIDIファイル(SMF)の中にテキストメッセージとして埋め込まれているものです。以下で、具体的な構造と記述方法、対応状況を詳しく解説します。


🎵 標準MIDIファイルにおけるコード・歌詞の格納方法

1. 歌詞(Lyrics)

  • MIDIの"Lyric"メタイベントとして格納されます。
  • 1音符に1音節(1つの歌詞断片)を対応させて記録。

例:

00 FF 05 04  L o v e   ⇒ "Love" の文字を「L」「o」「v」「e」に分けて対応
  • 一部のDAW(例:Cubase、Logic)では歌詞を編集画面で入力可能。
  • FF 05 はMIDI仕様上の「Lyric」メタイベント。

2. コード(Chord)

  • MIDIには正式な「コード」イベントは存在しませんが、
  • 通常は “Text” (FF 01) または “Marker” (FF 06) メタイベントとして書き込まれます。

例:

00 FF 01 05  Cmaj7   ⇒ テキストイベントとして「Cmaj7」が格納されている
  • コードは演奏情報としてではなく**単なる「文字列」**として格納されるだけです。
  • 読み取れるかどうかはソフト側の実装次第

🔍 これらのイベントの例(MIDIファイルのバイナリ表記)

時間イベントタイプデータ説明
00FF 0504 4C 6F 76 65歌詞 “Love” の「Lyric」イベント
60FF 0105 43 6D 61 6A 37コード “Cmaj7” の「テキスト」イベント

🧩 MIDIの内部トラック構造と配置例

  • MIDIファイルは複数トラックを持つことができ、
  • コードや歌詞は通常、**トラック1(コンダクタートラック)**に置かれることが多いです。

⚠️ 互換性の注意

ソフト歌詞(Lyric)読み込みコード(Text)読み込み備考
MuseScore△(特定の形式のみ)テキスト扱いでコードに変換されない場合あり
Cubase歌詞イベントは読み込めるがコードは通常手入力
Dorico読み込まれない(今のところ)
Logic Proコードの解釈には対応なし

🛠 解析ツール例(MIDIの歌詞・コードを確認する)

  • Sekaiju:Windows向けMIDIシーケンサー。メタイベントの内容をすべて確認可能。
  • MIDI Analyzer(Web):MIDIイベントを視覚的に表示。
  • midicsv コマンド:MIDIファイルをCSVに変換してテキストイベントを抽出可能。

✅ まとめ

項目MIDIでの記録方法Dorico対応
歌詞FF 05 Lyricイベント
コードFF 01 TextまたはFF 06 Markerイベント

Doricoでは現時点でこれらのメタイベントを無視してしまうため、コードや歌詞を保持したMIDIファイルを読み込んでも再現されません。代替手段としては、MusicXMLの使用が最も確実です。


必要であれば、具体的なMIDIファイルの中身を解析して、どこにどんなテキストイベントが入っているかを確認する方法もお手伝いできます。MIDIをアップロードしていただければ解析も可能です。

試してみたいMIDIファイルはありますか?